ケース別生前対策




おひとり様の生前対策
認知症対策から相続対策までトータルで対策をたてておきたい

独身の人が亡くなると、親が健在であれば親が、そうでない場合は兄弟姉妹が相続人となります。被相続人が一人っ子で親も既に他界している場合は、その財産は国庫へ帰属することになります。

生前対策をしなかった場合のお困りごと
  • 遺産は国のものになってしまう
  • 認知症を発症しても、法定後見人がつくまでは、介護施設への入居や、適切な治療を受けることができなくなる
  • 希望通りの葬儀を行うことができなくなる
①遺言
生前にお世話になった恩人や知人、恋人など相続人以外の方に財産をあげたい場合は遺言書の作成を。
遺言の詳細についてはこちら

②任意後見契約
判断能力が低下した場合や体に不調をきたした場合など将来起こりうる事態に備えて、信頼できる人との間で任意後見契約などを取り交わしておくことは、最期まで自分らしく過ごす上での安全策となります。
任意後見契約の詳細についてはこちら

③死後事務委任契約
人生のエピローグを迎えるおひとりさまにとって、葬儀や遺品整理、諸々の手続き等、死後の事務処理を誰が、どのように行うかは大きな関心事の一つとなります。この点、遺言においても葬式や法要の仕方などを書き残すことはできますが、法的な効力はなく、確実性にかけます。葬式や埋葬、その後の事務手続きについて司法書士等の専門家と死後事務委任契約を結んでおけば、親せきや地域・行政に負担をかけることなく、亡くなった後に必要な諸手続きを確実に履行させることができます。
死後事務委任の詳細についてはこちら

④民事信託の活用
上記をまとめて実現する方法として民事信託の活用が考えられます。信託を活用すれば、生前の財産管理から死後事務、さらにはその後の資産承継まで、まとめて設計でき、かつ任意後見契約と併用利用すれば、老後の生活の安全性をより強化させることができます。 最期まで自分らしく、快適に暮すためのセーフティネットとして信託の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。
民事信託についてはこちら


子のいない夫婦の生前対策
残された配偶者が安心して暮らせる対策が必要

子どものいない夫婦の場合、例えば夫が先に亡くなると、妻だけでなく、夫の親が健在であれば、親が、そうでない場合は兄弟姉妹(既に亡くなっている場合は甥や姪)が相続人となり、夫名義の不動産や預貯金は、夫の親せきが相続放棄をしてくれない限り、妻がすべての財産を相続することはできなくなります。もし夫の親せきが、持ち分を勝手に処分したり、その者の債権者から差し押さえられたりしようものなら、長年住み慣れた自宅を失うことも。そうはならないとしても、夫の親せきのうち一人でも自宅不動産の相続権を主張するような者がいれば、相続トラブルへ発展していく危険性もあります。また、妻が自宅不動産を単独取得するには相続人全員との話し合い(遺産分割協議)が必要となり、普段から夫の親せきと交流があればまだしも、会ったこともない親せきに署名・押印を頼むのは大変な作業となります。

生前対策をしなかった場合のお困りごと
  • 兄弟姉妹に借金がある場合は、その者の債権者から自宅を差し押さえられてしまう
  • 兄弟姉妹が亡くなり、その者の配偶者が自宅の一部の権利を主張してくる
  • 疎遠となっている兄弟姉妹が遺産分割協議書に印鑑を押してくれない
①遺言
子どものいない夫婦にとって遺言書は必要不可欠です。 兄弟姉妹には遺留分がないため、全ての財産を妻へ相続させる旨の遺言を残せば、妻はすべての財産を問題なく取得することができます。また、遺言があれば、トラブルが多発する遺産分割協議を省略させることができるので、相続手続きの負担もぐっと軽減されます。
遺言の詳細についてはこちら

②任意後見契約
配偶者のいずれか一方が先に他界すれば、残された配偶者は必然的におひとり様となります。そこで、判断能力が低下した場合や体に不調をきたした場合など将来起こりうる事態に備えて、信頼できる人との間で任意後見契約などを取り交わしておくことは、最期まで自分らしく過ごす上での安全策となります。
任意後見契約の詳細についてはこちら

※その他、おひとりさまとなった場合の生前対策については、「おひとり様の生前対策」を参照してください。


財産の大半が自宅不動産という方の生前対策
生前に対策をたてることで、特定の相続人に自宅不動産を確実に承継できる

相続人が複数おり、財産の大半が自宅不動産の場合、遺言がなければ原則通り、法定相続に従って分割されることになります。しかし、不動産は分けにくく、法定相続分で分割するのは至難の業。遺産を分割するため、自宅を処分せざるを得なくなると、残された配偶者が住む家を失くすという事態に追い込まれる危険性もあります。また、自宅不動産だけで相続税の控除額を超える場合は、納税資金を確保できずに、相続したはずの自宅を手放さざるをえなくなることも。

生前対策をしなかった場合のお困りごと
  • 相続人同士で話し合いがまとまらず、調停にもちこされる
  • 遺産分割を行うために住み慣れた自宅を手放さざるをえなくなる
  • 相続税を支払うため、自宅を売却せざるを得なくなる
①遺言
自宅を特定の相続人(例えば妻)に残したい場合は、「自宅は妻に相続させる」旨の遺言書を作成しておく必要があります。ただし、自宅のほかに財産がほとんどない場合は、他の相続人(兄弟姉妹を除く)の遺留分を侵害しないよう、下記の対策も併せて講じる必要があります。
遺言の詳細についてはこちら

②生命保険の活用
生命保険の死亡保険金は受取人の固有の財産となるため、遺産分割の対象とはならず、かつ預貯金のように煩雑な手続きを経ずして、相続後早い段階で受取人が自由に使える現金となり、納税資金や遺産分割のための資金として利用することができます。例えば、自宅を相続する妻を受取人に指定しておけば、妻は自宅を相続する代わりに、他の相続人(子どもなど)には代償金として受け取った死亡保険金を交付することができ、他方、自宅を相続しない子どもなどを受取人に指定しておけば、自宅を相続できない不公平さを解消でき、もめることなく相続手続きを円滑に進めていくことが可能となります。
生命保険の活用についてはこちら

③遺言に付言事項の記載を
生命保険を活用できない場合は、遺言に必ず付言事項を記載すべきです。付言事項自体に法的拘束力はありませんが、遺言において「遺留分減殺請求をしないで欲しい」とはっきりと意思表示を記載することは、故人の遺志を尊重し、請求を抑止する心理的効果が得られるケースもあります。


前妻との間に子がいる方の生前対策
遺言書の作成で、トラブルが多発する遺産分割協議を省略させる

再婚している方に、前妻との間に子がいる場合には、再婚後の配偶者や子以外に前妻の子も相続人となります。そのため遺産分割協議に際しては、前妻の子と協力して手続きを行う必要があります。両者の関係が良好であれば問題はありませんが、互いに反目し合うなど遺産分割協議をめぐってトラブルが生じる可能性が想定される場合は、何らかの生前対策を講じる必要があります。

①遺言
遺言により相続分を指定しておけば、トラブルが多発する遺産分割協議を省略させることができます。ただし、再婚後の配偶者や子に全てを相続させる旨の遺言を残す場合には、生命保険の受取人を前妻の子とするなど前妻の子の遺留分に配慮する必要があります。

②民事信託の活用
例えば前妻との間に子があり、後妻との間に子がいない場合において、先祖伝来の不動産を後妻→前妻の子へスムーズに承継させたいときには民事信託を活用する方法があります。
(詳細については民事信託の活用①を参照ください)


内縁関係の生前対策
内縁関係の配偶者の生活保障を中心にした対策を

内縁関係の配偶者には相続権がありません。そのため、遺言等で財産を残さない限り、住む家を失ったり、その後の生活が立ち行かなくなったりします。

①遺言
内縁の配偶者に相続させるには遺言書が必要不可欠です。ただし、他の相続人の遺留分に配慮する必要があります。
遺言の詳細についてはこちら

②生命保険の活用
生命保険の受取人は原則配偶者及び二親等以内の血族に限られますが、保険会社の中には一定の要件をクリアすれば内縁の配偶者を受取人に指定出来る場合があります。生命保険の死亡保険金は、前述した通り、受取人の固有財産となり遺産分割の対象とはなりませんので、遺留分減殺請求権を行使される危険性もなく、確実に指定した受取人に財産を承継させることができます。
生命保険の活用についてはこちら

③民事信託の活用
契約ないしは遺言によって、受益者を内縁の配偶者とする信託を設定しておけば、承継させたい自宅不動産等の財産を内縁の配偶者に引継ぐことができます。ただし、信託の場合も、他の相続人の遺留分に配慮する必要があります。
民事信託の詳細についてはこちら


相続人以外に財産を残したい場合の生前対策
遺言書や生前贈与を上手に活用して、大切な人に財産を残す

生前にお世話になった恩人や知人といった相続人以外の方に財産を残したい場合には、遺言や生前贈与などを活用する方法があります。

①遺言
財産を相続人以外の方に残したい場合には、遺言書でその旨を記載する必要があります。
遺言において相続人以外の第三者に対して、財産の全部又は一部を贈与することを「遺贈」といいます。遺贈には①目的物を特定せずに、遺産の全部又はその一定の割合を指定して行う「包括遺贈」(例えば「私の全財産をAに遺贈する」や「私の全財産のうちの3分の1をBに遺贈する」というように遺産の割合をもって行う遺贈)と、②、「私の自宅の土地建物をCに遺贈する」といった具合に目的物を特定して行う「特定遺贈」の二種類があります。
遺贈の対象となる財産が不動産の場合には、受贈者(遺贈を受ける人)と、相続人全員が共同して登記申請を行う必要があります。しかし遺贈に不服をもつなど相続人の協力を得られない場合には遺言内容を実現することができませんので、遺贈に際しては必ず遺言執行者を指定しておくようにしましょう。遺言執行者が指定されていれば、相続人の協力を得ることなく、登記申請が可能となります。
なお、包括遺贈では、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金や保証債務などのマイナスの財産も遺贈されてしまうことになるため、遺言者に負債などがあった場合には、包括遺贈を受けた方は、その割合に応じて負債も引き受けてしまうことになりますので、注意が必要です。

②生前贈与
生前に相続人以外の方と贈与契約を締結して、契約の内容通りに財産を譲り渡す方法を「生前贈与」といいます(単に贈与という場合には、この生前贈与を指します)。生前贈与は,本来,本人の意思において自由になし得るものでありますが,一方で遺族らの最低限度の相続分(遺留分)を保障する必要性もあります。相続開始前1年間になされた贈与と、遺留分権利者を害することを知ってなされた贈与は、遺留分算定の基礎となる財産に算入されますので、注意が必要です。また、年間110万を超える贈与については贈与税が課税されますので、その点を考慮して生前贈与を行いましょう。
生前贈与の詳細についてはこちら

相続させたくない方がいる場合の生前対策
財産を相続させたくない方がいる場合は生前対策が必要

ギャンブルや金銭問題でたびたびトラブルを起こし、暴言を吐いたり、暴力を振るったりする配偶者や子など、財産を相続させたくない方がいる場合には、何かしらの生前対策を行う必要があります。

①相続人の廃除
相続人の廃除とは、被相続人からみてその者に相続させたくないと考えるような虐待や侮辱、非行などがあり、かつ被相続人がその者に相続させることを欲しない場合に、被相続人の請求に基づいて家庭裁判所が審判または調停によって、相続権を剥奪する制度のことをいいます。もっとも、相続権を剥奪するという強い権利のため、家庭裁判所の許可が必要で、要件も厳格に定められています。相続人の廃除は生前あるいは遺言においても行うことができます。
相続人の廃除の詳細についてはこちら

②遺留分の放棄
遺留分の放棄は、相続放棄とは異なり、家庭裁判所へ申立てれば生前に行うことが可能です。ただし、放棄する者の自発的な意思が必要となることから、上記のケースのように被相続人に対する暴言・暴行・非行などを理由とする場合には実効性に乏しく、逆に、家業などの承継を理由とする場合に適した方法といえます。
遺留分の放棄についての詳細はこちら

③遺言書を活用する
例えば、Aさんには、Bさん、Cさんと子どもが二人おり、長年にわたってBさんの借金の肩代わりをAさんがしてきたとします。Aさんは日ごろから何かと世話を焼いてくれるCさんに財産の全部を相続させたいと考えています。このような場合、Aさんは遺言書において①全財産をCさんに相続させる ②Bさんの借金を肩代わりしたことを特別受益とみて、Bさんの相続分はゼロとする、③②による特別受益の持戻しにも拘らず、Cさんの遺留分(全財産の1/4)を侵害している場合には、Cさんに対し遺留分減殺請求をしないよう記載しておきます。それでもなお、遺留分減殺請求がなされた場合に備え④不動産以外の財産(預貯金)から減殺すべき旨、減殺の順序を指定しておきます。①②③の記載については、法的な拘束力がないため、Bさんが特別受益を認め、遺留分減殺請求をしないと考えるかどうかは、Bさんの意思に関わってきます。そのため、Bさんが承服しないときは調停にもちこされ、そこで特別受益に当たるか否か、その金額などが判定されることになるので、Aさんは後日訴訟になった場合に備えて、Bさんに金銭を渡したことがわかる書類を証拠として残しておくことがベターです。

④遺言+生命保険を活用する方法
上記の例で、Cさんの遺留分を少なくする方法として、①遺言で「Cさんに全財産を相続させる」旨を書き記し、かつ、②現預金を生命保険にかえ、受取人としてCさんを指定しておく方法が考えられます。現預金を生命保険に代えることで、現預金を減らすことができ、それに伴い相続財産も減少するので、必然とCさんの遺留分も圧縮できます。加えて保険金はCさんの固有の財産となるので、遺留分減殺請求がなされた場合は、その保険金を交付することで、自宅不動産を守ることができます(もちろん節税効果も期待できる)。

⑤生前贈与+相続放棄制度を利用する方法
④同様、Aさんが生前多めにCさんに財産を贈与し、相続開始後Cさんが相続放棄を申し立てれば、Bさんの遺留分を圧縮させることができます。Cさんが相続放棄?逆説的な響きは否めませんが、ポイントは①Cさんは相続人ではなくなる、ということと、②遺留分算定の基礎財産となるのは相続人に対する生前贈与と、相続人以外に対する相続開始前1年以内の贈与および、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってなされた贈与であること。すなわち、Cさんが相続放棄によって、相続人でなくなれば、AさんからCさんへの贈与が相続開始後1年以上たっており、かつAさん、Cさん双方がBさんに損害を加えることを知らなければ、その贈与は、遺留分算定の基礎財産に加算されずにすみ、その結果、これらの贈与に対する遺留分減殺請求を回避することができるというわけです。





TOP
メールでの相談はこちら