売掛金の時効を解説|債権者の対応と債務者は時効援用が必要な理由

商売上の取引をするとき、掛による販売をおこなうことがよくあります。

売掛金があっても支払いを受けないまま時間が経過してしまうことがありますが、売掛金が時効によって消滅することはあるのでしょうか?

債務者の立場からは、売掛金の時効が完成したらどのような行動をとるべきかが問題ですし、債権者の立場からは、売掛金の時効が完成しないためにとるべき措置が問題となります。

そこで今回は、売掛金の時効について、債権者と債務者がそれぞれ注意すべきことについて、解説します。

売掛金の時効期間はどうなっているの?

売掛金と時効

売掛金の時効期間を考える前に、そもそも売掛金とはどのようなものかを確認しておきましょう。

売掛金とは、売買を行う際に、対象の商品・サービスを先に提供し、「支払いを後に受ける権利」のことです。

たとえば、100万円分のパソコンを先に納品し、翌月に100万円の支払いを受ける場合、この100万円が売掛金となります。

売掛金は、支払いを受けたら消滅します。

通常の取引の場合、月末締め翌月10日払いなどにして、ある月内におさめた商品分の売掛金を、翌月にまとめて支払ってもらうなどの運用をします。

ところが、この売掛金が長期にわたって支払われないことがあります。

請求先の経営状態が苦しいので支払いが困難になっているケースもありますし、債権者が請求書を出し忘れているケースなどもあります。

このように、長期にわたって売掛金が支払われない場合、売掛金も時効によって消滅する可能性があります。

債権は、長期間請求しないでいると時効によって消滅するものだからです。

売掛金の時効期間は?

長期間支払われていない売掛金は時効にかかる可能性があります。

具体的にどのくらいの期間放置されたら、売掛金が時効消滅するのでしょうか?

これについては、民法や商法において規定されています。

民法の一般的な債権の消滅時効は10年ですが、売掛金の時効期間は10年ではありません。

売掛金は、商売上の取引にもとづくものなので、「商事債権」というものになるからです。

商事債権の場合、商法によって時効が短縮され、消滅時効が5年になります。

よって、売掛金の時効は一律で5年間になるのかとも思われますが、実際にはそうでもありません。

商法では、同法よりも短い時効期間が他の法律によって定められている場合には、そちらの法律が優先されると記載されているからです。

そして、民法では、債権の種類によって、1年~3年の短い期間で時効消滅する債権が規定されています。

具体的な内容は、以下の通りです。

1年で消滅 ・タクシーやトラックなどの運送料金
・旅館やホテルの宿泊費
・料理店、飲食店の飲食料
・貸席又は娯楽場の席料や入場料
2年で消滅 ・弁護士や弁護士法人の報酬債権
・公証人の債権
・生産者、卸売商人、小売商人の債権
・請負業者や注文制作、理髪店やクリーニング屋などの債権
・生徒の教育活動(月謝、教材費)や衣食住の世話をしたとき(下宿費用など)の債権
3年で消滅 ・医師、助産師、薬剤師の診療、助産や調剤についての債権
・工事の設計や施工、管理についての債権
(工事代金、建築代金や設計費、自動車の修理費など)

これらに該当しないその他の売掛金の時効期間は5年になります。

売掛金の時効の起算点について

時効のことを知るときには、「時効の起算点」についても知っておきましょう。時効の起算点とは、いつから時効期間を数えるかということです。

法律では「初日不算入(しょにちふさんにゅう)の原則」というものが定められています。

これは、期間を数えるときに、初日をカウントしないという決まりです。

そこで、売掛金の時効は、支払期日の翌日から起算することになります。

たとえば、工事代金の支払について期日を平成29年3月1日と定めていた場合、時効の起算点は平成29年3月2日となり、そこから3年が経過した時点(平成32年3月1日が経過した時点)で売掛金の時効が完成して消滅することになります。

時効中断について

売掛金を長期にわたって請求していない(されていない)場合、上記の時効期間1年~5年が経過すると時効が完成し、消滅時効してしまいます。

ただし、この時効については、中断させることができます。

時効の中断とは、特定の事情があると、時効の進行が中断して、それまでの時効期間の経過がなかったことになることです。

そこで、時効を中断させれば、売掛金の時効完成や消滅を防ぐことができます。

時効の中断事由には、債務者による債務承認や債権者による請求などがあります。

たとえば、工事代金の売掛金がある場合、3年以内に相手に対して裁判を起こして請求をしたら、時効を中断させることができます。

この場合、判決が確定すると、時効期間は10年になり、売掛金の時効期間をさらに10年間延ばすことができます。

この問題については、別の記事(「時効の中断とは?3つの中断事由を解説」)で詳しく説明しているので、参照してください。

債務者の立場からは、時効援用が必須!

売掛金の時効期間が経過したら、債務者としてはどのように対処すれば良いのでしょうか?

この場合、何もしなければ時効によって売掛金がなくなったと主張することができません。

売掛金がなくなったことを主張するには「時効援用」の手続きが必要です。

時効援用とは、時効の制度を利用する意思を債権者に対して表示することです。

援用しない限り、いくら長期間が経過していても、売掛金はなくならないので注意が必要です。

時効を援用する前に、「売掛金ありますね」などと言って認めてしまうと、後に援用ができなくなってしまう恐れがあります。

売掛金の時効が完成したら、すぐに時効援用の手続きをしましょう。

具体的には、確実に証拠が残るように、内容証明郵便という種類の郵便を利用します。

これらの時効援用の手続きと効果、方法などについては、別の記事(「時効援用の手続きを解説|内容証明郵便のルール」)で詳しく説明しているので、参照してください。

払ってもらえない売掛金!債権者ならどうする?

売掛金があっても、請求先が支払いをしてくれないケースがあります。

債権者にとって、どのように対処すれば良いのか、悩ましい問題です。

売掛金を請求する場合、相手が個人のケースもありますが、法人のケースもあります。

基本的な対処方法は共通しますが、以下ではまず法人が相手のケースから説明します。

法人が相手の場合

法人が売掛金を支払わない場合、以下のような理由が考えられます。

  • 資金繰りが苦しい
  • 商品やサービス内容に不満がある
  • とくに理由のない支払い拒否(ごねて代金減額を狙っている場合など)
  • こちらが請求書を送っていない(請求漏れ)

このように、法人が支払いをしない場合の請求方法を説明します。

(1)まずは話合いによって解決する

入金期日に売掛金の支払いがない場合、こちらが請求書を送るのを忘れている場合も多くあります。

まずは、自社において、請求漏れが無いかどうかを確認します。

そして、漏れが無いということであれば、相手の会社に対して督促の連絡を入れて、相手が支払いをしない理由を確認します

商品やサービス内容に不満があるということであれば、こちらに不備があったかどうかを確認します。

不備があったら再納品や修正、代替商品の提供などの手段を検討して、話し合いましょう。

相手の資金繰りが厳しいということであれば、いつなら支払いができるのか、どのような方法だったら支払えるのかなどを話し合い、支払方法を決めて、売掛金を支払ってもらいます。

相手との関係を継続したい場合には、波風が立たないように、なるべく穏便に話し合うのが良いです。

ただ、相手がとくに理由もなく、不合理に支払いを拒絶している場合は、支払いをするように強く求めましょう。

(2)書面や訪問によって督促する

穏便に話合いをしても相手が支払いに応じてくれない場合は、請求書などの書面によって督促します。

それでも応答がない場合は、相手の会社に出向いて、状況を確認します。

すでに営業していなければ現在の代表者の居場所などを確認しないといけません。

営業していたら、社内に入り、話合いをしなければなりません。引き渡し済の商品が残っていたら、それらを回収するのも1つの方法です。

また、相手が支払いをしない状態を続けているなら、それ以上商品を納入すると損害が拡大するので、商品の供給を止める必要もあります。

(3)裁判手続きを利用する

ここまでの方法で効果がない場合、調停や訴訟などの裁判手続きを利用して売掛金を回収します。

ただ、裁判手続きを利用すると、相手との関係が悪化するので今後の取引は難しくなる可能性が高くなります。

また、訴訟手続を利用する場合には弁護士に依頼しないと難しいので、費用がかさみます。

裁判所を利用する手続きの中でも、調停であれば弁護士に依頼しなくても自社で対応することもできます。

また、相手との関係を悪化させずに済むケースもあります。

売掛金の額が小さい場合(60万円以下)は、「少額訴訟制度」が利用できます。

少額訴訟制度は、簡易的な裁判手続きで、原則として、その日のうちに審理を終え、判決が下されます。

また、相手が支払わない場合に強制執行(差押え)をすることができる「支払督促」という方法も、簡単なので弁護士を使わずに利用できます。

支払督促とは、債権者が簡易裁判所で申立をすることにより、債務者の財産を簡単に差押えることができる制度です。

個人が相手の場合

売掛金を支払わない相手が個人である場合にも、基本的な対処方法は同じです。

個人の場合には、相手が経営者本人なので、話合いや督促をストレートにすすめやすいです。

ただ、個人が相手の場合、相手が逃げてしまったり無資力であったりすると、売掛金回収が難しくなることがあります。

個人相手の売掛金の額は法人相手のものより金額が小さいので、損害額は少ないことが多いです。

債権者が回収できなかった場合の処理

これらの方法を使っても、どうしても売掛金が回収できなかった場合には、会社の損失となりますが、会計処理として貸倒引当金に計上すると、これを経費にすることができます。

このとき、売掛金の放棄を明らかにするために、内容証明郵便などによって、相手に売掛金の放棄書を出しておくのも良いでしょう。

今回の記事を参考にして、売掛金と時効の問題を正しく理解して、損をしないように適切に対処してください。

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