借金をして返済が苦しくなると、返済を諦めて放置してしまうことがあります。
また、夜逃げをして住民票を異動しないでひっそりと過ごしていた場合、借金返済をしないまま長期間が経過してしまうこともあります。
このような場合、借金に時効が完成して返済が不要になる可能性がありますが、時効の援用は専門家に依頼することができるのでしょうか?
また、依頼するならどの専門家に相談すればよいのでしょうか?
そこで今回は、時効の援用をするときに弁護士、司法書士、行政書士の誰に依頼すべきかについて解説します。
時効援用で、何を専門家に依頼できるのか?
借金の時効が完成したとき、何もしなければ時効の効果を得ることができません。
時効によって借金を消滅させるためには時効の援用が必要です。
そして、時効の援用は、専門家に依頼することができます。
専門家に時効援用を依頼すると、次のようなことをしてもらうことができます。
- 時効完成の有無の調査
- 援用通知書の作成と送付
- 債権者とのやり取り
この3つが、時効援用をするときに重要なポイントとなります。
以下で、それぞれについて見てみましょう。
時効完成の有無の調査
まず、専門家に時効完成の有無の調査を依頼することができます。
時効を援用するためには、時効期間が経過していなければいけません。
本当に時効が完成しているかどうかを調べるためには調査が必要になります。
このとき、専門家は以下の手続きを行います。
- 最終取引日の翌日から5年(または10年)経過しているかを調べる。
- 債権者と連絡を取り、時効中断事由がないか調査する。
- 個人信用情報を閲覧して、債権者を調査する。
援用通知書の作成と送付
次に、専門家は時効援用通知書を作成し、債権者宛てに送付します。
時効援用通知の方法としては内容証明郵便を利用しますが、このとき、配達証明つきにすることで、相手に確実に援用通知書が送達されたことが明らかになります。
そして、相手に送達が行われたら、郵便局から専門家の事務所に配達証明書が送られてきます。
これにより、正式に時効を援用することができたことになります。
債権者とのやり取り
時効援用通知を送ると、債権者から問い合わせなどの連絡が入ることがあります。
このとき、連絡を受けるのは専門家です。
債権者からの連絡に対し、専門家が適切に応答することにより、相手は諦めるので無事に時効援用の手続きが終了します。
通知書の送達後、特に問合せがない場合には、そのままで問題ありません。
時効援用を専門家に依頼するメリット
それでは、時効援用を専門家に依頼するとどのようなメリットがあるのでしょうか?以下で見てみましょう。
正確な援用通知書を作成出来る
まずは、正確な援用通知書を作成できることが最も大きなメリットです。
債務者が自分で援用通知書を作成すると、どうしても内容が不正確になることがあります。
間違った内容の援用通知書を送っても、時効援用の効果が生まれない恐れがあり、時効消滅の効果が得られなくなります。
それだけではすまず、債務承認とみなされて、借金返済が必要になってしまう恐れもあります。
専門家に依頼すると、確実に正確な援用通知書を作成して発送してくれるので、そのようなリスクがなく、安心です。
間違った対処をせずに済む
債務者が自分で援用通知を行う場合、どうしても間違った対処をしてしまう恐れがあります。
たとえば、本当は時効が完成していないのに完成したと思い込んで援用通知書を送り、相手に居場所を知られてしまって、督促に悩む毎日になることなどもあります。
専門家に依頼すると、事前に時効完成の有無を調べることができますし、債務者の現住所を相手に知らせることもないので、債権者から督促を受けずに済みます。
手間が省ける
専門家に時効援用の手続を依頼すると、債務者は何もしなくて良くなるので、非常に手間が省けて、楽です。
内容証明郵便の作成と発送もしなくて良いですし、後に債権者から問合せが来たときも、専門家に任せておけば安心です。
自分で対応しなければならないとするとプレッシャーがありますが、専門家に入ってもらっていたら気持ちも楽になります。
弁護士?司法書士?行政書士?時効援用を依頼できる専門家は?
それでは、時効援用を依頼できる専門家にはどのような人がいるのでしょうか?
それは、弁護士と司法書士と行政書士です。以下で、それぞれのメリットとデメリットを確認しましょう。
行政書士
まず、時効援用を行政書士に依頼する場合を見てみましょう。
行政書士に依頼するメリット
行政書士に依頼するメリットは、費用が比較的安いことです。
それ以外には特筆すべきメリットはありません。
行政書士に依頼するデメリット
行政書士はできることが非常に限られています。行政書士ができるのは、あくまで「文書の代書」のみです。
作成する文書の差出人名は、債務者(依頼者)本人となりますし、事前に時効完成の有無を調査したり、後に債権者とのやり取りを債務者に代わって行ったりすることはできません。
行政書士に依頼できることは、内容証明郵便による時効援用通知書の作成と送付のみです。
それ以外の時効完成の有無の調査や後の債権者とのやり取りは、自分でしなければならない点が大きなデメリットです。
もちろん、訴訟代理権もないので、時効援用の問題で争いが起こり、裁判が起こったときには行政書士は対応してくれません。
また、行政書士は債務整理もできないので、時効援用に失敗したときには債務整理をするために弁護士などの他の専門家を探す必要があります。
司法書士
司法書士に依頼するメリット
・司法書士に依頼するメリット次に、司法書士について見てみましょう。
司法書士は、140万円以下の借金について時効援用を代行することができます。
140万円以下の借金であれば、司法書士の名義で時効援用通知書を作成して債権者宛に発送することができます。
また、時効完成の有無の調査や債権者とのやり取りなどの法律事務の代理もできます。
また、時効援用の効果について債権者との間で争いが発生した場合には、裁判が起こる可能性がありますが、この場合にも、司法書士は140万円以下の借金であれば代理することが可能です。
司法書士は弁護士よりも費用が安いことがあるので、上手に安い司法書士を探すことができれば、借金額が少ない場合には、司法書士に依頼することにもメリットがあります。
司法書士に依頼するデメリット
司法書士の場合、140万円を超える借金があると時効援用に関する代理業務はできなくなります。
また140万円を超える場合、裁判になると司法書士は代理人になることができませんし、代理権が認められるのは簡易裁判所のみです。
しかし、先述したとおり、司法書士は弁護士よりも費用が安いため140万以下の借金については司法書士に依頼するのがいいでしょう。
弁護士
弁護士に依頼するメリット
弁護士は、時効援用に必要なすべての業務を代理できます。
時効完成の有無の調査もできますし、内容証明郵便による時効援用通知の作成と発送もできます。
また、弁護士には借金額の制限がないので、140万円を超える借金があっても、弁護士名での時効援用ができますし、時効完成の有無の調査や債権者とのやり取りも可能です。
さらに、時効援用の効果について争いが起こり、訴訟になった場合でも、弁護士であればあらゆる場合に対応することが可能です。
弁護士はすべての裁判所において代理権があるので、簡易裁判所だけではなく、地方裁判所や高等裁判所で審理が行われる場合にも代理人として裁判手続きに対応できます。
このように、借金額にも裁判所にも制限がないことが、弁護士の大きなメリットです。
さらに、弁護士はあらゆる事案において債務整理に対応できます。
時効援用に失敗したときには、借金が残るので債務整理が必要になることが多いです。
その場合、行政書士は債務整理をする権限がありません。
司法書士は借金額が140万円以下の場合しか任意整理することができませんし、自己破産や個人再生については、書類作成代理権しかありません。
これに対し、弁護士であれば金額に無関係に任意整理ができますし、自己破産や個人再生においては完全な裁判代理権を持つので、メリットが大きいです。
弁護士に依頼するデメリット
弁護士のデメリットは、費用が高いことだと言われます。
ただ、実際には司法書士とそう大きくは変わらないこともありますし、安く受任してくれる弁護士もいます。
そこで、時効援用の手続きを賢く行いたいなら、費用がリーズナブルな弁護士を探して依頼する方法がもっともおすすめです。
今回の記事を参考にして、確実に時効援用を行い、借金返済を上手に免れましょう。
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