連帯保証債務も時効は成立する?時効期間と起算点、主債務者と連帯保証人の関係

借金をするときには、連帯保証人をつけることが多いです。

連帯保証人がいると、借金の時効はどのような考え方になるのでしょうか?

連帯保証人の債務に時効が成立するのでしょうか?

また、連帯保証人に対する時効中断は、借金をした本人にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

そこで今回は、連帯保証人と時効の関係について解説します。

なお、借金をした本人のことを「主債務者」、本人の借金を「主債務」と専門用語でいいますので、覚えておいてください。

連帯保証人の保証債務は時効が成立するの?

まず、連帯保証人の債務に時効が成立するのかをご説明します。

連帯保証人は、債権者との間で「保証契約」というものを締結しています。

この保証契約によって、連帯保証人は主債務者の借金を保証する義務を負う(「連帯保証債務」という)ことになります。

では、この連帯保証債務は時効によって消滅することがあるのでしょうか?

結論をいうと、連帯保証債務も時効によって消滅します。

連帯保証債務が時効になると、連帯保証人は自分の保証債務の時効を援用することによって、債務を免れることができるのです。

連帯保証債務は、主債務とは別の債務と考えてください。連帯保証人の保証債務は、主債務とは別に、独立して時効にかかることになります。

時効の期間と起算点

次に、連帯保証債務の時効の期間と、時効をいつからカウントするのか(「起算点」という)、について説明します。

これについては、主債務の内容や連帯保証の目的によって変わります。

通常の一般的な債務の場合には、時効期間は10年です。

しかし、営利目的を持った商行為によるものであったり、営利企業との取引であったりすると、5年になります。

たとえば、消費者金融などからの借金の連帯保証のケースでは、時効期間は5年になりますが、個人からの借り入れの場合には時効期間は10年です。

また、時効の起算点は、最終返済日の翌日からです。

連帯保証人が最後に借金を返済してから5年ないし10年が経過したら、連帯保証債務は時効消滅することになります。

連帯保証人は主債務の時効を援用できる?

上記のとおり、連帯保証人は、自分の連帯保証債務の時効を援用することができます。

では、主債務はどうでしょう?

連帯保証人が主債務の時効を援用できるのでしょうか?

連帯保証債務は主債務に附随するものなので、主債務が消滅したら連帯保証債務も消滅します。

このことを、保証債務の「附従性」と言います。

もしも連帯保証人が主債務の時効を援用できるなら、連帯保証債務が時効にかかっていなくても、主債務の時効を援用して借金から逃れることができることになります。

結論をいうと、連帯保証人は、主債務の消滅時効を援用することができます。

正確にいうと、「時効援用によって直接利益を受ける人」であれば、消滅時効を援用することができます。

連帯保証人は、主債務が時効消滅することによって自然に連帯保証債務も消滅して支払い義務がなくなるので、時効援用によって直接利益を受けます。

よって、連帯保証人は、主債務の時効を援用することができます。

連帯保証人が主債務の時効を援用したら、附従性によって同時に連帯保証債務がなくなるので、連帯保証人は借金の支払いをする必要がなくなります。

ただし、連帯保証人による時効の援用は連帯保証人についてしか効力を生じません。

どういうことかというと、連帯保証人が時効を援用すると、連帯保証人の債務はなくなりますが、主債務者の借金はなくなりません。

主債務者が自分の借金を免れたい場合には、自分で時効援用をする必要があるのです。

本人の時効が中断されると、その効果は連帯保証人にも及ぶ?

主債務者である本人に裁判上の請求があったり、本人が借金を返済したりして本人の時効が中断したら、連帯保証債務の時効は中断するのでしょうか?

このことについて民法では、 「主債務者に対して生じた時効中断事由は、連帯保証人に対しても効力を生じる」 と規定しています。

つまり、本人が債務を承認したり、裁判上の請求を受けたりして時効が中断した場合には、連帯保証人の保証債務の時効も中断してしまいます。

本人が支払いを続けている限りは、連帯保証人の保証債務の時効は完成しません。

連帯保証人が時効援用するためには、本人も、自分も、支払をしていないことが前提になります。

※ 時効の中断については別記事(「時効の中断とは?3つの中断事由を解説」)で詳しく説明してますので、参考にしてください。

では、ここからは連帯保証人との関わりでよく問題になるケースを紹介します。興味のある部分を読んでください。

連帯保証人が複数いる場合、保証人1人だけが時効援用できる?

連帯保証人が複数いる場合にも時効の問題が生じることがあります。

たとえば、連帯保証人が2人いるケースで、1人の連帯保証人が夜逃げして長期間支払をしていないけれども、もう1人が少しずつ返済しているケースです。

この場合、逃げている方の連帯保証人は、時効を援用して、借金返済を免れることができるのでしょうか?

結論をいうと、1人が夜逃げして長期間支払をしていない場合、他の連帯保証人が支払をしていても、夜逃げした方の連帯保証人は自分の保証債務の時効を援用することができます。

というのも、連帯保証人の時効は、個別に進行するとされているからです。

原則として、連帯保証人のうち1人に発生した事情は他の連帯保証人に影響しません。

連帯保証人が少しずつ返済していた場合、雲隠れした本人の時効はストップする?

では、連帯保証人が支払いをしていた場合、本人の時効にどのような影響があるのでしょう?

たとえば、主債務者が夜逃げして長期間支払をしていないけれども、連帯保証人がコツコツ支払いを続けていたようなケースです。

このとき、本人や連帯保証人の時効はどうなるのでしょうか?

連帯保証人の保証債務と主債務者の主債務は別の債務で、これらの時効期間は個別に進行します。

連帯保証人が返済を続けていたとしても、主債務の時効は中断せず、主債務については時効が完成する可能性があります。

そこで、このケースでは、主債務の時効完成に必要な期間が経過したら、主債務者は主債務の時効を援用して借金支払いを免れることができます。

繰り返しになりますが、連帯保証人も主債務の時効を援用できます。

この場合、連帯保証人も主債務の時効を援用することによって、先に説明した「付従性」により、借金を免れることができます。

連帯保証債務の時効は完成していませんが、主債務の時効が完成しているので、連帯保証人が主債務の時効を援用するメリットは大きいです。

連帯保証人が亡くなった場合、債務はどうなる?

次に、連帯保証人がなくなった場合、その債務はどうなるのかを見てみましょう。

連帯保証債務も相続の対象になる

借金などの負債は、相続の対象になります。よって、連帯保証債務も相続人に引き継がれます。

連帯保証人が亡くなったとき、何もしないでおくと、相続人は連帯保証債務を相続して、その支払をしなければいけません

時効期間について

連帯保証債務が相続された場合、時効期間についてはそのまま引き継がれます。

たとえば、被相続人が死亡した時点で3年が経過していたら、残り2年ないし7年が経過したら連帯保証債務が消滅します。

相続したくないなら相続放棄する

このような債務の相続を避けたい場合には、相続放棄という手続きをとる必要があります。

相続放棄とは、プラスの資産もマイナスの負債も含めて、一切の相続をしないことです。

相続放棄をすると、借金などの負債を相続する必要がなくなるので、連帯保証債務も相続しなくて済みます。

ただし、相続放棄をすると、負債だけではなく、預貯金や不動産などのプラスの資産も相続できなくなるというデメリットがあります。

また、相続放棄をするためには、相続が開始したことを知ってから3ヶ月以内に行う必要があります。

わかりやすく言うと、被相続人が亡くなったことと、被相続人が連帯保証人になっていたことがわかった時点から3ヶ月以内に家庭裁判所で「相続放棄の申述」という手続きをしなければなりません。

本人が自己破産した場合、連帯保証人の債務の時効はいつからカウントする?

最後に、本人が自己破産した場合の連帯保証人への影響について説明します。

主債務者が自己破産しても連帯保証債務はなくならない

主債務者が自己破産したら、主債務は支払い義務がなくなるので、連帯保証債務は消滅するのでしょうか?

保証債務は附従性を持つので、主債務が破産によって支払い義務を免除されたら、保証債務もなくなるように思えます。

しかし、この場合、連帯保証債務は無くなりません。

自己破産をするとき、主債務は「消滅」するのではないからです。

この場合、主債務は、債務としては存在しますが、「支払をしなくてよくなる」という扱いになるわけです。

支払い義務がなくなるだけで、債務としては存続するわけです。

主債務が消滅して連帯保証債務も消滅、ということにはなりません。

連帯保証債務の時効期間は?

では、この場合、連帯保証債務の時効期間にどのような影響があるのでしょうか?

回答としては、破産手続の内容によって、結論が異なってきます。

破産事件が管財事件となって配当手続きが行われるケースでは、債権者が裁判所に債権届けをするので、その時点で時効が中断してしまいます。

また、管財人が債権者表に債権者を記載すると、確定判決と同様の効果があるため、時効期間が10年になります。

破産事件が管財事件になって配当が行われると、主債務や連帯保証債務の時効期間は10年に延長されてしまうのです。

これに対し、破産手続が簡易な同時廃止になった場合には、債権調査も行われませんし、破産債権者表も作成されません。

この場合には、主債務の時効も連帯保証債務の時効も中断しないので、時効期間は破産手続き前から引き継がれます。

破産手続き前に時効があと3年だった場合には、破産手続後に3年経ったら時効が完成する、ということです。

以上のように、主債務者が自己破産したときの連帯保証債務の時効期間は、管財事件になるか同時廃止になるかで大きく異なってくるので、覚えておきましょう。

以上のように、連帯保証人と時効については、複雑でわかりにくい問題がたくさんあります。

連帯保証債務は基本的に主債務に対する附従性がありますが、連帯保証人が独自に主債務や連帯保証債務の時効を援用して債務を免れることも可能です。

今、連帯保証人になっていて、時効を援用出来るかどうかわからない場合には、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

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